現場オペレーターと人事担当者のための「玉掛け技能講習」完全攻略ガイド

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労働安全

本記事の概要

現場での荷役作業において、クレーン作業と並んで最も重要かつ危険を伴うのが「玉掛け(たまがけ)作業」です。

現場オペレーターの皆様が安全かつ確実に作業を遂行するため、また人材育成を担当する人事・安全衛生管理者の皆様が計画的な資格取得を推進するために、本記事では実際の玉掛け技能講習で学科・実技ともに満点だった筆者が、講習の全貌と実務におけるポイントを網羅的に解説します。

💡 こんな悩みや疑問を持った方に向けた記事です

  • 「受講を指示されたが、試験の難易度や合格率が気になる…」
  • 「学科の計算問題や実技試験で減点されるポイントを知っておきたい」
  • 「人事・管理者として、講習費用や準備物、法的根拠を把握したい」

📌 この記事を読むと分かること

  • 玉掛けの基本と法的根拠: 1トン未満(特別教育)と1トン以上(技能講習)の違い・無資格作業の罰則
  • 講習の全貌と試験対策: 講習時間・合格率(95〜98%)・学科の足切りライン・実技減点ポイント
  • 最新の受講動向と費用: 受講者数推移・受講費用目安(22,000円〜28,000円前後)・必要な準備物
  • 修了試験合格のためのポイント: 学科試験で狙われやすい箇所、実技試験で特に注意すべき合図・呼称

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玉掛け資格及び講習の定義

玉掛けとは何か

玉掛け(たまがけ)とは、クレーンや移動式クレーン、デリックなどの吊り上げ荷重を有する揚重機械のフックに、ワイヤロープやフック付きチェーンなどの吊り具を「掛けたり、外したりする作業」全般を指します。

単に荷を引っ掛けるだけでなく、荷の重量計算、重心の測定、適切な吊り具の選定、合図(手合図・笛合図)、荷の安定性の確認までの一連の作業を含みます。

法的根拠と資格体系

労働安全衛生法(第61条「就業制限」)およびクレーン等安全規則に基づき、玉掛け作業は吊り上げ荷重に応じて明確に区分されています。

【吊り上げ荷重による作業区分の違い】

■ 吊り上げ荷重 1トン未満
  └ 必要な資格:玉掛け特別教育(学科9時間+実技3時間程度)

■ 吊り上げ荷重 1トン以上
  └ 必要な資格:玉掛け技能講習(学科12時間+実技7時間) ★本稿の対象

法令上の注意(労働安全衛生法第61条): 吊り上げ荷重1トン以上のクレーン等による玉掛け作業に、無資格者を従事させた場合、事業者は6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金(安衛法第119条)に処されます。また、クレーン運転士の免許を保持していても、玉掛け技能講習を修了していなければ玉掛け作業を行うことはできませんのでご注意ください。

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玉掛け技能講習の概要

講習の構成および受講科目

講習は「学科講習」と「実技講習」に大別され、標準的には計19時間(通常3日間)で実施されます。なお、クレーン運転士免許などの所持者に対しては一部科目の免除規定が存在します。

学科講習(12時間)

  1. クレーン等に関する知識(1時間): クレーン、移動式クレーン、デリックの種類・構造・機能。
  2. クレーン等の玉掛けに必要な力学に関する知識(3時間): 質量、重心、力と運動、吊り角度と荷重(張力)の計算。
  3. クレーン等の玉掛けの方法(6時間): 吊り具(ワイヤロープ・チェーン・スリング)の選定、廃棄基準、具の点検、合図方法。
  4. 関係法令(2時間): 労働安全衛生法、安全衛生規則、クレーン等安全規則の関係条文。
  5. 修了試験

テキスト例

実技講習(7時間)

  1. クレーン等の玉掛け(6時間): 質量推定、重心測定、吊り具選定、実際の吊り荷を使った玉掛け・合図・移動・着床作業。
  2. クレーン等の玉掛けのための合図(1時間): 手合図、笛による明確な指令伝達の訓練。
  3. 修了試験

受講者数の推移(2010年〜2025年)

製造業・建設業における安全管理の徹底と、世代交代に伴う新規取得需要により、玉掛け技能講習の修了者数は高水準を維持しています。以下は厚生労働省の統計等に基づく推移データです。

年度年間受講者数(概数)主な背景・傾向
2010年約 125,000 人リーマンショック後の設備投資停滞期からの回復期
2013年約 138,000 人アベノミクスによるインフラ・製造業需要の拡大
2016年約 145,000 人労働安全衛生法改正に伴う安全衛生教育強化の動き
2019年約 152,000 人五輪需要・団塊世代リタイアに伴う若手育成ラッシュ
2021年約 130,000 人コロナ禍による講習開催制限および受講人数制限
2023年約 148,000 人製造業の国内回帰・半導体工場等建設ラッシュに伴う再拡大
2025年約 155,000 人労働時間上限規制(2024年問題)後の多能工化の推進

修了試験の概要・合格点・合格率・難易度

講習の最後には、学科・実技それぞれで修了試験(筆記および実技テスト)が行われます。

学科試験

  • 形式: マークシート方式または多択一選択式(20〜40問程度)。
  • 合格基準: 全体で60%以上の得点、かつ各科目において40%以上の得点を得ること(足切りあり)。

実技試験

  • 形式: 以下の三つの試験で構成されます。 ※1、2で30分ほど
    1. 質量目測:指定された荷(形鋼やコンクリートブロック等)の寸法を定規などを用いずに計測し、体積を求めた後、体積×密度により質量を算出します。
    2. 指示された吊り方、釣り角度等から玉掛けに適切な径のワイヤロープを選定します。
    3. 合図者として、補助者に対して玉掛けの指示を行い、クレーン運転者に合図を出して一定コースを通過・着床させます。
  • 合格基準: 100点満点からの減点方式で、70点以上を保持すれば合格となります。

合格率と難易度

  • 合格率: 95%〜98%
  • 難易度: ☆☆☆☆★(講習をしっかりと受講すれば難易度は高くありません)

高い合格率の落とし穴: 
合格率が98%近いからといって「誰でも無条件で合格できる」わけではありません。
実技試験において「合図忘れ」「指差し確認の省略」「危険エリア(荷の真下・地切り時の足元)への立ち入り」などの重大な不安全行動をとった場合、大幅減点となります。
特に”退避指示”、”退避確認(指差呼称)”は要注意です!

開催概要・準備・費用

年間開催回数

各都道府県の労働基準協会連合会、コマツ教習所、キャタピラー教習所などの民間指定教習機関にて毎月1〜4回程度開催されています。

開催地

全国各都道府県の教習所、技能講習センターです。

費用(受講料)

受講費用: 約 22,000円 〜 28,000円(テキスト代・消費税込み)

※保有資格(クレーン運転士免許等)による科目免除がある場合、18,000円〜22,000円程度に減額されます。

受講に必要な準備物・服装

【受講時の必須準備物一覧】

[学科講習]
* 筆記用具(HB鉛筆、消しゴム、ボールペン)
* 電卓(質量・荷重計算用 ※スマホは使用不可)
* 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)

[実技講習(重要)]
* 作業着(長袖・長ズボン:肌の露出禁止)
* ヘルメット
* 安全靴
* 手袋(軍手不可の場合があるので要確認)
* ホイッスル(笛合図用:教習所で配布される場合もありますが持参推奨)
* 印鑑(修了証受取時に必要な場合あり)
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修了試験対策:不合格を防ぐ重要ポイント

技能講習を一度で確実に修了するために、押さえておくべきポイントをまとめました。

学科試験のポイント

学科試験で最も受験者がつまずきやすいのが力学分野の「吊り角度とワイヤロープ張力」の計算です。
以下の基本公式を押さえておきましょう。

【計算公式】 ワイヤ1本にかかる張力 =(荷の重量 ÷ 使用本数)× 張力係数

  • 吊り角度 60度(正三角形): 張力係数 1.16(1本の負担が大きく増えます)
  • 吊り角度 90度: 張力係数 1.41
  • 吊り角度 120度: 張力係数 2.00(荷の重量と同じ力が1本ずつにかかるため極めて危険です)

第1章 クレーン等に関する知識

  • 作業半径:クレーンの模した図を参考に、作業半径がどの箇所を示すか
  • ホイールクレーン:クレーン操作用運転室の中に「走行用運転室」を備えているか、いないか
  • 安全装置、災害防止装置(巻過防止装置、巻過警報装置、過負荷防止装置、逸走防止装置(アンカ)、レールクランプ、車輪止め、緩衝装置)

第2章 玉掛けに必要な力学に関する知識

  • 力の三要素:力の「大きさ」「向き」「作用点」
  • 力のモーメント:力F × 長さL
  • 種々の物体の密度:綱(鉄)7.8t/m3、鋳鉄7.2t/m3、コンクリート2.3t/m3、松0.5t/m3
  • 重心:真上で持ち上げると、重心の周りのモーメントが釣り合っているので、物体が傾くことなく持ち上がる。
  • 物体の安定:安定側/中立/転倒側
  • 慣性:物体は、外から力を受けない限り「動き続ける」あるいは「静止し続ける」
  • 摩擦力:垂直力の大小に比例し、接触面積の大小には関係がない
  • せん断荷重:ボルト・キーに働く力の向きを理解しておく
  • 静荷重と動荷重の違い

第3章 玉掛け用具の選定と使用方法

  • つり角度の大きさによるワイヤロープに働く力の違い
  • 基本使用荷重の計算式
  • 玉掛け用ワイヤロープの選定
  • 玉掛け用つりチェーンの選定
  • ベルトスリングの形状(写真を見て選択)
  • クランプの使用上の注意:使用荷重には上限だけでなく、下限もある(滑ってしまう)
  • アイボルト型シャックルの使い方:シャックルボルト側にワイヤロープを通さないこと(滑って外れるおそれがある)
  • 台木の持ち方:上ではなく横を持つ(指を挟むおそれ)

第4章 玉掛けの方法および合図の方法

  • 指示系統:玉掛け者とクレーン等運転者が別の場合、合図者が必要
  • 退避位置:走行・横行方向から離れる(2mほど)
  • 地切り:微動巻上げによって行い、10m〜20mほどの高さで一旦停止し、つり荷の状態を確認する
  • つり荷の誘導:合図者が行う
  • 「対称つり」と「非対象つり」の意味
  • フックへのアイの掛け方:あや掛けは厳禁
    ※合図については実技で学ぶ

第5章 労働災害事例

事例紹介のため割愛

第6章 関係法令

  • 特別教育と就業制限:つり上げ荷重が1トン未満か1トン以上か/クレーン・移動式クレーン・デリック(揚荷装置は制限荷重)
  • 外れ止め使用義務(具備している場合)
  • 定格荷重の表示
  • つり荷の下への立ち入りの禁止及び表示等の義務
  • クレーンの運転者を荷をつったまま運転位置から離れさせてはならない
  • ワイヤロープの安全係数は6以上、つりチェーンは条件を満たせば4以上、そうでなければ5以上
  • ワイヤロープの使用禁止条件
    • 1よりの間で素線の10%以上が切断しているもの
    • 直径の減少が公称径の7%を超えるもの
    • キンクしたもの
    • 著しい形くずれ又は腐食があるもの
  • つりチェーンの使用禁止条件
    • 伸びが製造時長さの5%を超えるもの
  • リングの具備:エンドレスでないワイヤロープ又はチェーンについては、その両端にフック、シャックル、リング又はアイを備えているものでなければ玉掛用具として使用してはならない
  • ワイヤロープの作業開始前点検(実技メイン)

実技試験のポイント

  1. 質量目測:
    • 定規やメジャーを用いずに、指定された荷の寸法を計測する必要がある。
    • 自身の体や持ち込み可能な備品の寸法を頼りに計る。
      👉両手を横にまっすぐ伸ばした時の指先から指先までの距離
      👉肩から指先までの距離
      👉手を開いた時の中指から親指先端までの距離
      👉下敷きの縦の長さ、横の長さ など
    • 体積は「縦×横×長さ」、密度をかけて質量に変換する際は単位に注意!(mm↔︎m)
    • 実際の質量よりも軽く目測した場合、減点が大きいので安全率を5%〜10%見ておくと良い。
  2. ワイヤロープ選定:
    • 「つり点数」「つり角度」「荷の質量」から、ワイヤロープ1本にかかる張力を計算(実際の試験では表から選ぶ)し、適切な径のワイヤロープを選定する。
    • 当然ながら、ワイヤロープにかかる張力が、ワイヤロープの基本使用荷重を上回ってはいけない。
      ※径が太い方であれば2グレード程度上振れても減点は無いようです(教官曰く)。
  3. クレーン等の合図:
    • 作業手順、それぞれの作業での指差呼称・合図、補助者としての動作を丸ごと覚えて実践する必要がある。(下記「指差呼称資料」参照)
    • 合図、笛:当日しか覚える機会がない(YouTubeなどで予習すれば別)ので、隙間時間に何度も練習し習得すること。
    • 合図の重要ポイント:巻上げ及び巻下げ時に「地切り高さ(10〜20cm)」で一度クレーンを停止する合図は超重要。
      これを忘れると、大きく減点され、かつその後の合図等も連鎖的に減点になる。
      あと、合図や笛が小さいとクレーン運転士は操作してくれない。
    • 指差呼称:普段使用しない単語が複数あるため、何度も繰り返し声に出すことで慣れること。(例:あだまき4点づり、アイ掛け、介添(かいぞえ)、台木(だいぎ)、歯止め など)
    • 指差呼称の重要ポイント:”退避指示”、”退避ヨシ”は特に重要。

指差呼称資料

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まとめ

玉掛け技能講習は、単なる資格取得にとどまらず、重量物を扱う製造現場においてご自身と仲間の命を守るための必修知識です。

  • オペレーターの皆様: 講習での基本動作(地切り・指差し呼称・手合図)を現場でも省略せずに実践しましょう。
  • 管理・人事担当の皆様: 受講者のスケジュール確保だけでなく、安全靴や手袋などの準備物手配、修了後の社内資格登録・受講費用の助成金活用(人材開発支援助成金など)まで計画的に進めていきましょう。
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公式情報・法令 原文リンク集

講習のお申し込みや最新の法改正条文につきましては、以下の公的機関Webサイトをご確認ください。

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